(株)瀬川商店

  瀬川 清右衛門
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与信管理コンサルタント 瀬川 泰弘
 
ランチェスター法則応用 ☆ 戦略重視の与信管理
危ない会社も伸びる得意先も見分ける方法
 
  良心的な倒産でも20%の回収率、破産なら5%の回収。回収率は低い。

 550万円引っ掛かれば、粗利益率10%なら5500万円の売り上げに匹敵し、年間純利益50万の営業マンなら失われた10年になる。
 手形を割り引いていれば不渡手形を買い戻す資金も入用で、2倍の資金が必要となり、二乗作用のようなショックを受ける。連鎖倒産の危険も考えられる。
 金融機関も厳しく、世間も与信管理の甘さと大丈夫かというだけ。
 上場会社、大手系列、老舗企業、成長分野のベンチャー企業も安心できない。
 債権回収セミナーで言われる担保や保証もなかなか取れるものではなく、
 債権譲渡を受けて回収といっても、対応が遅ければ、すでに債権は残っていない。

 引掛り・不良債権防止は「逃げ勝ち」を第一に考えた債権管理をする事です。

 戦略領域を長期的に観察し趨勢を判断し、戦術領域に危ない兆候が出始めるのを見逃さない。
  
   企業の劣化は足が速い。決断のための精査が必要で、こちらも逃げ足が速ければ損害は抑えられる。突然と思うだけで、予兆は必ずある。
 
 倒産という結論の前に、不渡り手形があり、金策性の兆候があり、財務体質の弱さがあり、収益性の低下がある。競争で苦戦しているところが戦略領域。
 経営者がワンマンで、多角化を始め、予算計画もなく、資金に逼迫し、「支手追い経営」となり、融通手形の誘惑に負け、いけない倒産になった。
 遠因・近因、長期・短期、原因・結果、戦略・戦術。「これを続けていれば、いずれこうなり、この兆候が出る」という考え方。順逆の推理。仮説の検証。
 
 倒産シグナル・赤信号をみんなで渡らず逃げ勝つには、日々得意先に接する営業マンの役割が重要です。
 
 信用情報の感度を高めることが求められます。普段からそれとなく調査項目を聞く癖を持っていれば、いざに近くなった時でも、質問がしやすくなります。戦略重視の与信管理では、コンサルタントセールスに必要な得意先の戦略・戦術も分析できます。また、戦略で負けている会社の見分け方は、裏返せば戦略で勝っている会社の見分け方になります。新規開拓・伸びる会社での売り上げの増やし方にも応用できます。A面もB面も役に立つ。

 倒産した社長の話を聞くと、大体私が甘かった、と。見込み違い。独善。他人依存。「まさか自分が」。他社だけでなく社長自身の戦略点検を実施するのにも、現実的で有効な手段となります。戦略健康診断で大病予防、健康増進。
 ランチェスター先生は、「航空武器の戦略的、戦術的利用(第三章)」で、「戦略的偵察、strategic reconnaissance」という言葉も使われて分析されております。ライト兄弟の初飛行から11年後の論文ですから、分析的思考の予測力はすごいものだと思います「情報なくして戦略なし」
 
 企業を分析する場合、決算書が有効な情報源とはなります。しかし、相手先の決算書が入手できるかがポイントになります。上場会社などの有価証券報告書は、投資家保護のため公開されますが、それでも、ランキング通りではない。
 中小零細企業では、決算公告も入手しにくいし、入手できても要旨でしょう。 
信用調査機関の利用により財務諸表らしきものが手に入ることもありますが、評価点数・格付けにマーカーで印をつけ閲覧というのではなく、自社なりの再評価が必要です(財務諸表入手不能と付記されている場合もある)。情報管理。
 信用調査機関の資料も、自社の立場から言えば側面調査・二次情報であり、データの再評価には戦略情報(見えざる部分)・戦略知識が必要になります。
 自社の存続にかかわることですから、自社が主体となって遠慮なく聞き取りすべきでしょう。金融機関は担保も取りながら、試算表・資金繰り表まで提出させているのですから、担保なしで信用売りしている危険を考える必要がある。   
 
 決算書の取りにくい規模の小さな会社の場合、与信マインドと戦略知識を持った営業マンが外部観察・質問によって獲得できる戦略情報が重要となります(チェックリストによる評価等には、竹田洋一先生著「営業現場中心の危ない会社の見分け方」などの教材で、着眼点・兆候・質問の仕方を一度はじっくり勉強する必要はある)。会社の業績を決める社長の戦略実力の情報が特に大事になります。よく言われるのは「魚は頭から腐る」ということですが、銀行の貸付畑にいた人から聞いた話ですが「経営者には人格のほかに金格というものがあり、それが信用だ、この金格を見極められるかが勝負だ。」ということのようです。
 
 決算書(それも3期ぐらい)が運良く入手できれば、金融機関の格付け手法(定量分析項目と定性分析項目等を組み合わせた測定)を参考に評価してみることもできます。(金融機関が存続の鍵なら、金融機関の見方は重要。)

 倒産会社の取材1600社、債権者会議出席200社、危ない会社の見分け方の講演750回以上の竹田陽一先生は、「現在の儲け、自己資本の蓄積、資金の使い方の3つで経営内容はわかる」とされております。
 
 また、「累積赤字が月商の2倍くらいになると、経営内容が構造的に悪くなる。この段階から出る兆候は、日常の兆候・まともな会社の兆候とは質的に異なり、いよいよ油断ができなくなる」とされています。
 
 ここから先も段階的に危ない会社の財務構造が表面化する兆候群を企業体の部署ごとにチェック項目を挙げておられます。
 デミング博士は品質管理についてですが、「数字だけで判断すると、その数字に含まれていない他のもっと大事なことを見落としてしまう」というようなことを言われています。つまり、人間がすることだということでしょう。

 どちらにしても決算は年一回・過去の結果をまとめた物ですから、予測分野については戦略情報から類推し、戦術分野に現れた兆候の発見・裏づけの調査が必要です。変化には原因があり、兆候の現象の意図・真因を探る。
 売上減少→赤字続き→自己資本不足→借入過多となり、資金調達余力・担保余力がなければ、貸しにくいお客さんとなり、金策性の兆候が出てくる。
 
 早めに気づき逃げ勝つには、「事前の情報収集7分に判断3分」のウェイトになる。
 
 販売先を訪問する機会が多い、営業マンの得意先情報収集の役割は大きい。いわゆる「危ない会社のヒト・モノ・カネの兆し」にしても戦略知識があれば、段階・時期等も読み取る精度が高くなる。現象として現れた兆しのみを見るのでなく、変化・背景(何故か)・見えざる戦略領域を分析し進退の判断をするには営業マンに戦略知識が必要です。

 決算書が取れないことが多い経営規模の小さな会社では、得意先情報として有力な判断材料になるのが登記簿です。物的証拠としてはっきり危険な兆候が出ていることもあります。商業登記とは、一定の営業上の重要事項について登記によって公示し、企業活動の安全と取引の円滑を図るための制度です。商号・本店・資本金・事業目的・役員の変遷・代表者の住所・債権譲渡などが分かります。役員の辞任・解任の不自然さで、会社内部の内紛が推し量れることもあります。また、新規取引の場合は商業登記簿から、休眠会社起こしではないか、事業目的の中に換金性の高い商品が加えられていないか、などを読み取り、パクリ屋の被害から免れる事もできます。不動産登記とは、不動産取引の安全のため不動産の物理的状況や権利関係を公示するための制度です。不動産の所有者、賃借権・担保権の設定やその内容が分かります。借入金額・利率、どこから借り入れているかなどが書いてあるので、資金繰り状況の判断材料になります。仮登記権利者が不自然な個人であれば、街金融からの借入を推測させる。

  登記簿は公示されているものですから、手数料はかかりますが、誰でも法務局で閲覧できますし、謄本も取得できます。総務部門の方でなく、これを営業マンがすることです。「回収なくして販売なし」与信管理の最前線は営業マンだという自覚ができます。見方については少し勉強しなければならないでしょうが、竹田陽一先生の御著書の「営業マンにもできる中小企業の信用調査」の第一歩ともいえます。「インターネット登記情報提供サービス」を利用すれば、インターネットで確認もできます。調査したことは取引先には分かりません。
 
 会社の業績を決める社長の情報のウェイトは高いといわれますが、社長が事業に対してどれくらいの熱意を持っているかは外部からどう判断するのでしょうか。それは、仕事に投入する時間量が「物的証拠」になります。朝の出勤時間が早ければ、同業者より時間を有効利用しようとしている姿勢が窺われます。

 「社長様はどのような事業展開で今後業績を伸ばそうとお考えですか」と聞けばよい。普段から聞き上手に接していれば、消極的か、言い訳が多いか、伸ばす意欲が感じられるかなど、長期的に見れば変化への対応力が読み取れます。

 危ない会社予備軍ともいえる伸びない会社は、売り負けしていることもあり、単価は安く返品も多い、おまけに取引条件も悪いということもある。伸びる得意先に乗り換えていくことが、リスクの分散であり自社の伸びに貢献します。
 危ない会社のチェックリストの話をすると、「うちは女子従業員の電話応対が悪くて」といわれる社長様がおられますが、これはチェックリストだけの一人歩きの話です。士気の低下という変化を読み取る必要があります。社内の雰囲気というより、営業マンが実際に足を運んでいけば、クレーム返品の話や支払いの督促の話が電話で小声でされていたり、後ろ向きの情報がはっきり掴めたりします。危ないかどうかより逃げること(決断)を考えるべきでしょう。営業にかかる労力費用、配達・集金にかかる労力費用を選択集中していくべきです。そんなことなら判っていると言いますが、実行できているかが重要です。 

 いわゆる手形ジャンプの要請があった時の対応策も会社により個性があるようです。遠慮せずに突っ込んだ質問をするべきです。最近の月商、次の手形期日到来日、支払手形振出額などです。平素から競合他社を含め得意先情報をつかんでいれば、大口債権者中自社が何番目かはつかんでいなければなりません。
一部の支払いを要求したり、物的担保や・保証を取るチャンスでもあります。

 与信管理会議を開き、営業マン、営業リーダー、経理(管理部門)、社長で与信戦略の意思統一を図っておく必要があります。大口得意先特Aは社長が与信担当になります。注意を集中するため重点管理を第一に考えて実行すること。すべての会社でなく絞り込み、戦略から注意点を明確にしておく。早く気づくほど早く逃げられる。与信限度枠を決めておけば、被害の限度も決まる。忘れた頃にならないように、年三回は開催する。自社の戦略上こういう戦略傾向のある得意先を伸ばしていく方針とかも考えられます。契約関係をはっきりする、回収策の取り方の手順などの、戦術面の仕組み作りも徐々にでもしていくこと。
 会社・自宅の不動産の謄本も継続的に取得する必要があります。調査会社にこの点を調査してほしいと指示して依頼し、自社主体の与信管理ができます。
 
       (参考 http://blog.livedoor.jp/abunai1/     http://sinyou1.exblog.jp/ )